本日1月22日、いよいよ核兵器禁止条約が発効となります。改めて、この画期的な出来事を祝いたいと思います。コロナ禍の暗い時代の中、大きな希望です。
ご存じの通り、日本政府はこの条約に後ろ向きな態度を続けており、この条約に対し署名も批准もしていません。言うまでもなく日本は唯一の戦争被爆国です。その日本の政府が核兵器廃絶に踏み出さないというのは、もはや日本という国を任せるに値しないということではないでしょうか。
今でも日本では『核の傘』という言葉が疑問無く使われます。核兵器を持っているアメリカが後ろについているから安全、という考え方で「核抑止力論」というものです。しかしこれは本当にそうでしょうか。『核の傘』が必要との論調は、こちらも核兵器を使う可能性をチラつかせることで、日本を侵略しようという意図を持つ他国が核兵器を使うことを抑止する、というものです。しかし私たちは思い出さねばいけません。かつて、アメリカとソ連が核開発競争を行い、その結果どうなったか。世界の核兵器は最大で7万発まで増大し、キューバ危機という核戦争寸前の事態を招いた訳です。その後米ソは部分的核実験停止条約を発効、戦略核兵器削減条約(START)を経て大幅に核兵器の数を削減させていって、今現在の世界の核兵器の数は1万5千発ほどです。人類は、一度滅びかけた。この事実の前には「核抑止力論」意味をなさないと考えます。人類と核兵器は共存できない。これが突きつけられた事実です。
そもそも、核抑止力論の立場に立つなら、どんな小国であっても最低減1発は核兵器を持っていないと公平ではありません。これは、全ての国での核実験を認めることでもあります。それが世界に何をもたらすか、想像してください。とてもじゃないけれど現実的な話ではありません。現実には、現在のNPTの仕組みは今現在核兵器を所有している国だけに核兵器を認めるものであって、こことも「核抑止論」は矛盾します。
その「核大国」が言うことを聞くはずがない、そんな論調もありますね。これ歴史を見れば誤りであることが分かります。国連では既に、クラスター爆弾と地雷の2つの兵器について違法化していますが、これも条約の議論の際には、軍事大国が言うことを聞くはずがないから意味が無いとの議論がありました。今現在どうなっているかというと・・・この2つの兵器は新造されていません。これが『国際世論』の力です。実際には銀行がクラスター爆弾や地雷を作る企業には融資をしないと発表するなどの動きもあり、軍需産業側が追い詰められたという面もあります。しかしそこも含めて世論が動かしたということで間違いはありません。これが現実です。では、核兵器ではどうか?ということ。もっともっと世論の力を大きくして廃絶へ向かわせることはできます。かつての地雷やクラスター爆弾のように。(※現実に、核兵器に関わる企業には融資をしないと表明する銀行はもう表れています)
世界は、大国のものではありません。理念的にもそして実効的にもです。そういう気持ちを込めて書いた文章が下のものです。これは、中野区議会に出された『「日本政府に核兵器禁止条約の署名と批准を求める意見書」の提出を求める陳情 』に対し、昨年の区議会第4回定例会最終日において賛成の立場で行った討論です。肝心なところは、中野区が『憲法擁護・非核都市宣言』を掲げていること。ちなみにこの陳情は、賛成19名、反対22名で不採択となりました。非常に残念です…未だに上記のような理由にならない理由で核廃絶に反対する議員が半分以上も居ること、皆さんにも知っておいていただきたいなと思います。
(※具体的な賛否については、最新の区政ニュース「中野がいいさ63号」に記載)
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第14号陳情『「日本政府に核兵器禁止条約の署名と批准を求める意見書」の提出を求める陳情」』に対し、日本共産党議員団の立場で賛成の討論を行います。
核兵器禁止条約は、核兵器の非人道性をきびしく告発し、その開発、実験、生産、保有から使用と威嚇にいたるまで全面的に禁止して違法化し、核兵器に「悪の烙印」を押すとともに、完全廃絶までの枠組みと道筋を明記しています。2017年に国連で採択されたこの条約は、今年の10月24日には50か国の批准を達成し、これにより2021年1月22日に国際協約として発効することとなりました。署名する国は現在85か国で、今も増え続けています。国内のヒバクシャとその家族などから始まった運動が、核廃絶を求める世界市民とともに、世界を動かしたということです。核保有国や核の傘の下にいる国々には、この声にどう応えるかが問われることになります。
そういった問われる国の一つがこの日本です。そして日本は唯一の戦争被爆国でもあります。本来ならば、世界の核廃絶の潮流の先頭に立つべき国の政府が、条約に背を向け、核兵器廃絶に後ろ向きな姿勢を取り続けていることには、世界中から批判が相次ぎ、平和を求める国民から、特に被爆地広島長崎からは大きな失望の声が聞こえてきます。
この条約について、核保有国との分断になるといった意見が散見されます。この条約では、将来的な核廃絶のプロセスを明らかにすることで、核保有国でも条約を批准する方法、その道筋を示しています。従って分断にはなりません。また、NPTの取り組みと矛盾するとの意見も見受けられますが、NPT第6条では早期の核廃絶とその取り組みへの誠実な履行を約束するという、「核兵器禁止」に相当する項目があり、これも矛盾するものではありません。条約の発効後、核兵器は非合法との国際規範が生まれます。この圧力にさらされることで、保有国が核兵器を使用することは一層難しくなります。核兵器禁止条約が現実に核廃絶の力を持つことは重ねて指摘をしておきます。
21世紀を迎え、世界の構造は大きく変わってきており、力のある大国だけでルールを決める時代ではなくなってきています。軍事同盟に加わらない非同盟諸国は国連での発言力をつよめ、持たざる国を含めた地域の会議体は、アジア、中南米、アフリカなどに重層的に存在し、その地域の安定に寄与しています。核兵器禁止条約は、こうした世界の潮流と重なり合って実現したものとも言えます。
日本政府が、こうした世界の中での遅れを取り戻すチャンスが今です。来年1月22日の発効前に、この条約に署名・批准することです。この陳情に賛成することで、自治体から日本の核廃絶を後押しすることは、世界を動かす大きな力になるのではないでしょうか。ヒバクシャの願いに応え、核廃絶を願う区民・世界市民の声に応え、次の世代に核の無い世界というバトンを渡すためにも、自治体から日本政府の姿勢を変えていく必要があります。
そして憲法擁護・非核都市宣言のある中野区から核兵器廃絶の声を上げることは、他の自治体以上の大きな意味があると考えます。区長は、この議会の質疑の中で、条約を評価し、区としても核廃絶を発信していくことを述べました。議会からも、憲法擁護・非核都市宣言に相応しい態度を示す必要があると考えます。
以上を持って、本陳情に対する賛成討論とします。